山岳テント基礎講座 7,大きさの決め方

安易に考えていると失敗しやすいのが山岳テントの大きさ選びです。
このページでは、大きさ選びに関係するポイントを解説していきます。

山岳テントの使用人数の目安

メーカーは目安となる使用人数を案内しています。
これは人が寝られる最低限のスペースで考えられています。

荷物置き場のスペースは考えられていないので記載人数で使うと狭いです。
ですので使用人数よりは大きめを選ぶ方が快適です。

しかしながら山岳地域では、いろいろなことが関係してくるので大きさは一概には決められません。
自分の使い方をよく考えてからサイズ選びをしたほうがいいでしょう。

人が寝るのに最低限必要なスペース

人が寝るならどれくらいのスペースが必要なのでしょうか?。
シュラフに入った場合のおよその大きさです。

肩幅は60cmくらい、足もとの幅は30cmくらい必要です。

複数人の場合は、頭と足と交互に寝れば無駄なスペースを減らせます。

縦 身長+20cm

ほとんどの場合は身長+20cmくらいなら大丈夫です。

しかし、身長方向は少しでも物が当たると窮屈さを感じやすいです。
ほとんどのテントは身長方向に余裕があります。

しかし、物を置いて狭めてしまうと途端に窮屈さを感じます。
縦方向には物を置かない前提でテント選びをしたほうがいいでしょう。

寝相

寝相が悪い人は大きめサイズを買ったほうがいいです。

私の場合は、足が疲れていると特に寝相が悪くなります。
寝返りでテントを壊しそうになったことも何度かあります。

ネタではないのが書いてて悲しいです。

荷物のスペース

単独行の場合は、ザックなどの大型荷物をテント内に置く人が多いです。
ザックや取り出した荷物は結構なスペースを取りますので購入前に考えに入れておいたほうがいいでしょう。

5月~11月で、1~3泊程度のテント泊なら65リットル程度のザックを使います。
65Lザックは、縦70cm×幅40cm×厚み30cmの大きさです。
寝かして置くので、70cm×40cmのスペースが必要です。

他に、調理器具、食料、小物類、脱いだ雨具などの置き場所が必要になります。

シュラフとザックスペース

1人用のテントで幅が90cmならば、荷物を置くと結構ギリギリのサイズになるということがわかると思います。

フロアの立ち上がり部分は結露することが多いので、壁に触れないように寝ることが多いです。
90cmや100cmのサイズでは、荷物の置き方を工夫しないとシュラフを濡らしてしまうことになります。

ザックを外に置くか、寝るときにザックに足を突っ込んでスペースを確保します。
複数人の場合も狭くなりがちなので、同様にしてスペースを確保します。

前室

前室があるテントは物置に使えます。
しかし、基本的に装備は、なるべくならテント内に入れておいたほうがいいです。

「風で飛ばされる」「露で濡れる」「動物に持って行かれる」といったトラブルの原因になりやすいからです。

外に物を置くときは、「水濡れ対策をする」「固定する」といったことを心がけておいたほうがいいです。

重量

当然ながら大きなテントほど重くなります。
軽いテントを求めている人が多いと思います。

しかし、私は、テントの大きさを決めるうえで「重さ」は大して重要な要素ではないと思います。

最近のテントは、昔のテントとは比べものにならないくらい軽量コンパクトになっています。 昔のテントは、3kg以上有るのが当たり前でした。
今の軽量モデルは1.5kgていどです。
その他の装備も劇的に軽くなっています。

ですので、一般登山に使うのなら、特に重さを意識する必要はないと思います。

重さがネックと感じる人は、テント泊山行が行えるだけの体力がついてないといえます。
こういった人はもっと体力をつけてからテント泊山行に望んだほうがいいと思われます。

近年は、「軽量=良いことだ」と考える風潮が強いと思います。
でも、そういった安易な考えかたは大きな危険性をはらんでいると思います。

一般登山で軽さを望むような人は、体力不足が引き起こす危険について勉強した方がいいと思われます。

収納サイズ

収納サイズがコンパクトな方がパッキングがやりやすくなります。
そういった面から考えると小型テントのほうがパッキングでは有利です。

しかし、これは、収納方法を工夫してパッキングしやすくする方法があります。
それは、丸めずに角形に折ってたたむ方法です。

円筒形の物が多くなると、無駄な隙間ができやすくなります。
角形に折る方が隙間を空けないパッキングがやりやすいです。

ダブルウォールテントならフライと本体を分けると更にパッキングしやすくなります
きれいなフライシートと、土のついた本体を分けられるのもいいですね。

山岳テント選びは少し大きめが得

テントの重さは、軽い方が楽なのは言うまでもありません。
しかし、カタログだけを見て、少しでも軽いテントを選ぶというのは良い方法とは思えません

テントというのは、ワンサイズ大きいモデルでも大した重さの差にはなりません
そして、重さは大して変わらなくても、居住空間はかなり広くなります。

国内最大シェアと思われる某メーカの某テントで具体的に説明します。

単独登山の場合

テントサイズ1人用、2人用イラスト

縦はどちらも同じ210cmです。
高さはどちらも同じ105cmです。

1人用テントはフロア幅90cmで1480gです。
2人用テントはフロア幅130cmで1610gです。

2人用テントのフロアは、1人用に比べて約44%も広くなっています。
しかし、重量は約9%しか増えていません。

重さ約1500gと約1600gなんてほとんど誤差の範囲かと思います。
しかも、2人用を買っておけば、いざというときは2人で使うことも可能です。

これは、このメーカーのテントだけが特別な訳ではありません。
他のメーカーのテントでも、この具体例と同じ傾向になります。

どうです?。どうせならフロアが44%も広い2人用を使いたいと思いませんか?

このように安易にテントを選ぶと失敗のもとになりやすいです。

2人で一張りの場合

2人用テントに2人入るイラスト
2人用テントに2人入るとかなり狭いです。

2人の場合も同じように広めのテントを選ぶ方が割り得です。

3人用、4人用テントに2人で入るイラスト

3人用テントはフロア幅180×縦210×高さ110cmで2040gです。
床面積37800㎡。

4人用テントはフロア幅200×縦230×高さ120cmで2230gです。
床面積46000㎡。

4人用テントのフロアは、3人用に比べて約22%広くなっています。
重量は約9%増えました。

1人用→2人用ほどの割得効果はありませんが、荷物の分担を考えると広めを選ぶほうが効果的です。

複数人なら、共同で使う装備を分担して運ぶことができるからです。
こういった装備のことは共同装備と呼びます。

単純に計算すれば、4人用テントでも1人で担ぐのは1115gぶんだけで済みます。
1kgちょっとなら大した重さではないので、広いテントを選ぶ方が効果的かと思います。

共同装備は他にも調理用のストーブと燃料など、重くなりがちなものが含まれます。
ですので、共同装備を増やせば重量の対策が行いやすくなります。
軽くなるぶんを快適性にまわせばいいと思います。

3人~4人で一張りの場合

テントサイズ4人用イラスト

4人用テントに2人で入った場合と3人で入った場合のイラストです。
イラストのザックは65リットルになっていますが、実際には共同装備になるのでもっと小さいザックが使えます。
荷物置き場を真ん中にすれば、夜中でもゴソゴソできます。

4人用テントに3人で入ると、向きを変えてもかなりギリギリになることがわかります。
2つのテントに分散したほうが良さそうですね。

ちなみに、イラストは実際の商品サイズと使用人数をもとに作成してあります。

このイラストの4人用テント場合は、230cmの辺に横並びすれば4人収まります。 しかし、本当に密接した状態になるので現実的にはかなり厳しい使用状況になると思います。

大きすぎるテントは持て余す

大きめテントの方が割り得効果が高いことを紹介しました。
でも、大きめといっても、大きすぎはダメですよ。

あくまで、「ギリギリのサイズ」よりは「大きめ」という意味です。
上記の通り、1人なら130cm、2人なら200cmていどです。

テントが大きすぎると、「快適を通り越して」「持て余す」ことになるからです。

雨が降ってテントが濡れたりすると、重量も増えますし空気が抜けにくくなりカサも増えます。
帰宅後のメンテナンスも大型テントの方が面倒です。

人間欲張りなもので、テント泊に慣れてくると、今度は効率化を考えるようになります。
大きなテントを使っていると、だんだんと無駄に気がつくようになるのです。
そうしたときに、大きすぎるテントは使いにくいと感じてしまいます。

大きすぎるテントは他人の迷惑

大きすぎるテントは自分たちだけでなく、他者との問題も関係してきます。

近年は、テン場が過密状態になっています。
無駄に大きなテントを使ってスペースを独占してしまうと他人に迷惑になります。

明らかに大きすぎるテントは他の登山者から白い目で見られることになるので要注意です。

昔なら白い目だけで済みましたが最近はもっと怖いです。
パシャリと撮られてSNSのネタにされかねないからです。

登山は知らないと「ひんしゅくもの」になる行為が多いので気をつけたほうがいいですね。

これは、初心者だけとは限りません。
昔はOKなことも、近年ではNGになっている行為も多いです。

テントに関して言えば、排水の溝掘りとか、竹ペグ残置とかですね。
まだまだ、有りますがキリが無くなるのでこの辺で。

山岳テントの大きさと設営難度

テントの大きさの違いによって設営難度が変わってきます。
普通は大きなテントほど不利になります。

整地

ドーム型テントを設営するなら底面積ぶんだけの平坦地が必要です。

テン場では、3人用までのサイズのテントが張られることが多いです。

ですので、小型テントならほとんどの場合には、ちょっと小石をどけるていどですみます。
しかし、4~6人用といった大型テントを使う人は少ないですから整地が必要になる場合が多いです。

大型テントなら「みんなで整地すれば良いのでは?」と考えるかも知れません。
しかし、動かすことのできない大きな岩の多いテン場や、狭い棚状のテン場ではどうにもならないことがあります。

1~3人用のテントしか張れないテン場なんてありませんが、大きなスペースが埋まってしまっていることはよくあります。
そういった場合は、がんばって土木作業をするか、他の人に詰めてもらってスペースを空けるしかありません。

こういった事情から、大型テントは設営場所で不利になります。

積雪

雪があるなら、踏み固めたりする必要があります。
当然ながら大きなテントほど手間と時間がかかります

強風対策で雪壁を作るときも余計に手間がかかります。
単独行なら1人でやらないといけないので小さいテントのほうが有利です

氷点下でテント泊をすると霜や氷がつきます
撤収時の気温が氷点下のままですと霜や氷を完全に取り除くことが難しくなります。
霜や氷のぶんだけ荷物が重くかさばることになります

こういった条件で使うテントは、なるべく小さなほうが何かと便利になります。

強風

風があるとテントが張りにくくなります。
大きなテントほど設営が難しくなります

それに、大きなテントほど風の抵抗を受けやすいのでガッチリと固定する必要があります

そして、大きなテントほど強風による破損などのトラブルが起こりやすくなります
大きなテントには太いフレームが使われているので剛性そのものは補強がされています。

しかし、生地は、小さなテントも大きなテントも同じ厚さの生地が使われている場合が多いです。
ダブルウォールテントはフライシートに風をはらみます。
当然ながら大きなテントの方が風をおおきくはらみますので、そのぶん受ける影響が大きくなりトラブルにつながりやすくなります。

森林限界を超えた稜線のテン場で使うなら小型のテントを選ぶ方がトラブルを減らせます。

山岳テントの大きさと居住性

居住性もカタログからはわかりにくいことの一つです。

居住空間は記載されているぶんのスペースが使えるわけではありません。
それは、壁が垂直ではないからです。

テント内で壁に近いところに座ると頭が当たってしまいます。
テント内で座っているときの頭の高さのスペースはもっと狭いのです。

複数人でテントに入ると顔を付き合わせることになるので覚悟?が必要です。

結露

結露は、広いテントよりも狭いテントの方が発生しやすくなります
結露は、同じ大きさのテントなら、1人よりも2人の方が発生しやすくなります。

結露が発生すると、壁に触れないように気をつかいます。
壁との距離が近い小さなテントほど結露のことが気になってしまいます。

結露が気になって仕方ないという人は、大きめのテントか個別のテントを選ぶほうがいいかもしれません。

圧迫感

狭いテントですと圧迫感を感じて落ち着かなくなる人もいます
圧迫感を感じて眠れないという人もいます。

自分が、そういった性質なのかのテストはかんたんにできます。
普段寝ている状態でシーツなどで簡易テントを作って寝てみればいいのです。

作業性

狭いテントに多くの物を並べているとトラブルの原因になりやすいです。
踏みつけたり、寝返りでつぶしたりしやすくなります。

中身の入ったコッヘルを倒してしまったりすることもあります。

パーソナルスペースと個別テント

パーソナルスペースとは、他人が近づいても不快感を感じない距離のことをいいます。
複数人でテントを使うときは、わりと軽視できなかったりします。

パーソナルスペースは性別、親密度、年齢、経験によっても変わってきます。

男性同士よりは女性同士のほうが、近距離でも不快感が少ないとされています。
異性同士では、同性同士のときよりも不快感が増します。

しかし、夫婦や恋人などの特別な関係なら、距離が近くても不快感を感じにくくなります。
同様に、同性同士でも、親友などの仲の良い関係なら距離が近くても不快感を感じにくくなります

年齢は、若齢、老齢、中年の順に近距離での不快感が増すとされています。

経験は、人との接近の経験です。
子供の頃のプロレスごっこ、体育系部活での組み運動、すし詰めの満員電車、すし詰めの山小屋泊など。
こういった経験が多い人ほど、他人が近寄っても不快感を覚えにくいと思います。

他人がすぐ近くに来たときに動揺する人は要注意です。
テントでは長い時間を過ごさなくてはなりません。
慣れてくる人もいますが、嫌悪感を増す人もいます。

そもそも、山小屋に限らず「他人と同じ空間で寝るのが無理」といった人もいます。
友達がお泊まりに来たら眠れなかったという人も要注意ですね。
個別テントを考えた方が良いかもしれません。

テントの大きさで使い分けを考える

山岳テントは高価ですので何張りも買うのは難しいと思われます。

無駄な買い物をしないためには用途をしっかり考えて選ぶと失敗が少なくなります。

所有テントとの関連性

初めてテントを買うのなら、最初の一張りは快適性を重視して、少し大きめのテントを選ぶほうがいいです

テント泊は慣れが必要なので、使いにくい狭小テントはおすすめできません。
それに、テン泊初心者なら、困難なコースや厳しい自然条件で使うこともないでしょう。

ですので、最初は大きめのテントでいいと思います。

そして、経験を積んでから買う2張り目は、最低限のサイズのテントを選ぶようにします。
このテントは、アグレッシブな山行に使います。

これはホンの一例ですが、こうやって、用途別に割り振りを考えておいて買うほうが後々有利になるでしょう。

仲間のテント

仲間が持っているテントはあまり考えに入れないほうがいいかも知れません。
登山という趣味を長年にわたって行う人は限られてくるからです。

仕事、結婚、不動産の購入などの理由で登山から離れる人が多いです。

仲間との付き合いがなくなってしまい装備品の買い直しや買い増しを迫られることが結構あります

ちょっと寂しいですが、仲間が居なくなったときのことも考えにいれておいたほうがいいかも知れません。

大人数用テントはどうする?

大人数なら複数のテントを使う

これは、私個人の考えです。
あくまでも、参考程度に考えてください。

4~6人のパーティーなら大型テントを一基で使うより、二基のテントに分散したほうがいいと思います。
しかし、上の項目で説明したとおり、これらの行為は過密テン場では控えたほうがいいかもしれません。
ケースバイケースで考えていただきたいと思います。

それでは、説明です。

設営場所と耐風性能

これは、すでに説明した通りです。
大型テントは、設営と強風で不利です。

荷物の分散

大型テントはかさばりますので、荷物の分散に不平がでやすくなります。
二基のテントの方が荷物を分散させやすくなります。

使い回しが効く

大型テントでは、パーティー構成が少人数になったときに出番がありません。
テントを二基で使っていれば、パーティー構成が少人数になってもそのまま使えます。

トラブル時の保険

テントが破損したなどのトラブルが起きたときに二基で使った方が対応しやすくなります。
荷物を全部外に出して一つのテントに詰めて寝るといった対応ができます。

大型テントが有利な場合もある

積雪期用テント

積雪期用テントなら大人数で一基に泊まるほうがいいと思います。

大勢でテントに入った方が暖いです。

それに、雪山のような状況では設営の作業量が増えますし、迅速な作業が要求されます。
二基のテントを立てるよりも役割分担をして一基のテントを立てる方が効率的かと思います。

組織登山

山岳会、ガイド登山、ネット登山組織、
これらの組織で常時6人以上のパーティー編成なら大型テントの方が有利になることも多いでしょう。

プロ?の方が多いので、大型テント特有の問題対策も万全でしょう。
いまさら私が口を出す必要もないですね。

まとめ

■山岳テントの使用人数の目安
○荷物を置くスペースを忘れずに
○テントの大きさを決めるうえで重さは考えなくてもいい
○山岳テント選びは少し大きめが得
○大きすぎるテントは持て余す
○大きすぎるテントは他人の迷惑
■山岳テントの大きさと設営難度
○大きいテントほど設営場所が限られる
○大きいテントほど悪天候に弱い
■山岳テントの居住性
○居住空間が狭いほど結露が発生しやすい
○圧迫感のテストをしてみるもの一考
○所狭しと物を置くとトラブルの元
○パーソナルスペースに注意
■テントの大きさで使い分けを考える
○用途別に割り振りを考えて買う
○仲間のテントをアテにしない
■大人数用テントはどうする?
○4~6人なら二基のテントを使う
○積雪期用テントなら一基を全員で使う
○組織者の大人数登山なら大型テントが有効