山岳テント基礎講座 6,使用シーズンと積雪期用テント

このページでは、山岳登山に使われる積雪期用テントについて解説しています。

※注:当ページの一部には「大げさな表現」「過激な表現」が使われています。
 「ジョークがわからない人」「神経過敏な人」は読まないことをオススメします。

誤解が多い積雪期専用モデル

日本のテントメーカーでは、モデルごとに使用可能な季節が明確に分けられています。
3シーズン用テント」と「積雪期用テント」です。

テントメーカーで定義している3シーズンとは「雪が降らない(積もらない)春、夏、秋」のことです。
積雪期とは、「雪は降るが、雨が降ることはない季節(条件)」のことです。

積雪期用テントは「撥水性の生地」で作られており「防水性」はありません

積雪期用テントは「冬期用テント」「雪山用テント」とも言われています。

誤解している人が多いですが「冬だから積雪期用テント」ではありません。
冬でも、雨が降ることがある地域(南アルプスなど)では積雪期用テントは使えません

また、「雪山=積雪期用テント」でもありません。
春先など残雪がある雪山でも、雨が降るなら積雪期用テントは使えません。

季節で使い分けるのではなく、「雨が降るか、雪が降るか」で使い分けるのです。

では、どうして、雨か雪かで使い分けるのでしょうか?。
それは、雪が積もる状況で通常のテントを使うと危険だからです。
雪中テント泊特有の危険が「酸欠」です。

3シーズン用のダブルウォールテントを使った場合です。

雪が降り続けるとフライシートは雪に覆われてしまいます。
フライシートと地面のあいだは雪によってふさがれてしまいます。
そうなると、防水性の生地では通気をすることができなくなり、中の人は酸欠になってしまいます。

こういった事故を防ぐために、雪が積もる状況でテント泊をするときは「外張り」と呼ばれている専用のフライシートを使います。
外張りは「スノーフライ」とも呼ばれています。

外張りは、通気性のある生地で作られています。
雪で覆われても通気を保ちやすい構造になっているのです。

通気性の生地なので、雨を防ぐことはできません。
ですのでメーカーは、積雪期専用と3シーズン用とで明確に区分けしているのです。

3シーズン用テントでも、外張りがオプション品で売られているモデルがあります。
このモデルはフライシートを変えることで積雪期にも使えるように設計されています。

外張りのメリット

さて、雨を防がなくていいのなら「3シーズンテントをフライシート無しで使えばいいのではないか?」と思うかもしれません。
しかし、外張りを使うメリットがあります。

結露は気温差が大きいほど発生しやすくなります。
1枚だけの生地ですとテントの内と外では気温差が大きくなるので結露がおきやすくなります。

低温下で結露が発生すると霜に変わります。
テント内一面にビッシリと霜がついてしまいます
風があると霜が落ちてくるので不快な思いをすることになります。

外張りを使っていても霜はつきます。
しかし、本体のみで使うよりは霜の付着が少なくなります。

気温の面から考えても外張りが有利です。
本体生地だけでは薄いので外気が直接流入してしまいます。
そうなると外気温に近くなり、とても寒い思いをすることになります。

外張りは、周囲を雪で埋める構造になっています。
これにより、外気の直接の流入を少なくする効果があります。

さらに外張りにはテント内の気温を下げすぎない、効果的な換気ができる仕組みがあります。

水蒸気を含んだ暖かい空気は、外の冷たい空気の方へ流れる性質があります。
外張りがある場合は、外に流れ出たぶんだけの外気がテントの中に入ってきます。

無駄に暖かい空気が流れ出ることがないので、そのぶんだけテント内の気温の低下を少なくすることができます。
同時に、結露による霜の付着を少なくする効果もあわせもっています。

外張りを使うメリットはまだあります。

それは、ファスナーの凍結です。
ファスナーは低温下では凍り付いてしまい開けられなくなる恐れがあるとされています。
外張りは、ファスナーを使わずに出入り口を開閉できる構造になっています。

外張りのイラスト

出入り口は筒型になっていて、紐で縮めて閉める仕組みです。
こういった構造の出入り口のことは「吹き流し」と呼ばれます。

筒型なので、雪の吹き込みを防ぐ効果もあります。

ファスナーが凍り付くことは滅多にありませんが、壊れて閉じなくなるといったトラブルを考えると吹き流しのほうが安心です。

ちなみにテントのファスナーには「コイルファスナー」と「ビスロンファスナー」が使われています。

コイルファスナーの方が軽くて安価ですが異物の噛み込みには弱いといった特徴があります。
ビスロンファスナーは少しかさばりやすいのが難点ですが、「凍結しにくい」「砂や泥などの異物にも強い」などといった特徴があります。

凍結が心配ならビスロンファスナーを使った製品を選ぶのも一考かと思われます。

積雪期用テントの特別な構造

3シーズン用テントに外張りを使えば、積雪期専用テントを買う必要はないかと思われるかもしれません。
しかしながら、積雪期専用モデルは雪山に特化した性能があります。

フレーム

積雪期用テントは、ある程度の雪が積もっても潰れないように、3シーズン用テントより頑丈なフレームが使われています。

内張り

積雪期用テントは「内張り」が用意されているモデルがあります。
内張りとはテント内に吊して使う蚊帳のようなものです。
内張りを使うことにより、保温効果が上がると説明しているメーカーもあります。
また、テント内壁につく霜を少なくしたり、霜が落ちてくるのを防ぐ効果もあります。

積雪期用テントのデメリット

さて、ここまで積雪期用テントの存在価値について説明しました。
雪中テント泊をするなら積雪期用テントが必要かと思われたかもしれません。
でも、実際には積雪期用テントを使わない人も多くいます。

それには、いろいろと理由があります。

積雪期用テントは使える条件が限定的

積雪期用テントを使うなら雨が降らないことが絶対条件です。
中部山岳では、正月でも雨が降ることがあります。

積もった雪が溶けないことも大切です。
夜間は雪でも、夜が明けたら積もった雪が溶けてくることがあります。
こういった状況では積雪期用テントは使えません。

南アルプスなどの降雪量が少ない地域ではレインフライのダブルウォールテントを使う人も多いです。
こういう人は、ベンチレーターの換気能力が失われないように改造したり、雪壁を作り強風対策をしたりと何らかの対策をして使います。

積雪期用テントは、東北地方の日本海側(いわゆる豪雪地帯)や北海道なら必要になると思われます。

重い

積雪期用テントは頑丈に作られているので重いです。

3シーズン用テントに外張りをかぶせるタイプでも、雨になるか雪になるかの判断が難しいときがあります。
そういった状況では、外張りとレインフライ両方を用意しないといけなくなります。
そのぶん装備が重くなってしまいます。

氷点下でテント泊をすると霜や氷がつきます。
すべて落とすのは難しいので、そのぶん重量とかさが増えます。
帰りのことも考えておかないといけません。

複数人の場合は共同装備にできますが、1人の場合は全てを背負わなければなりません。
単独の場合はもっと軽量なテントで代用されることが多くなります。

それは、防水透湿素材を使ったシングルウォールテントです。
雪山用にしている人も多くいます。
テント内部は霜だらけの悲惨な状態になりますが、シュラフカバーを使うなどの対策をすればなんとかなります。

寒い

勘違いされている方が多いですが積雪期用テントでも中は寒いです。
あくまでも、外気温や他のテントと比べると多少はマシということです。
ですので、テント内がマイナス10℃以下になることはよくあることです。
積雪期用テントでも、冬用のシュラフや防寒対策は絶対に必要です。

変人になる恐れがある

厳冬期に雪中テント泊をやる人は間違いなく変人でしょう。

冬なんて下界でも寒いのに、わざわざテント担いで泊まりにいくなんてヘンタイですよね。

ありとあらゆる物が凍り付く世界です。

朝、目を覚まし、霜まみれのシュラフカバーから顔を出して、
「まだ生きているんだ」ということに興奮を覚えてしまう人。

もうダメですね。こういう人は。
すでに一線を越えてしまっています。

二度と、もとの体には戻れないでしょう。

可哀想なことに、こういった人には自覚がありません。
普通の人を「根性なし」と、ののしったりします。

こういう人に出会ったらハッキリと言ってあげましょう。
「俺が根性なしなんじゃなくて、あんたがド変態なんだよ!」と。

まとめ

  • 雨が降る条件では積雪期用テントは使えない
  • 積雪期用テントの外張り=通気性有り=酸欠防止
  • 地域によっては出番が少ない
  • 積雪期用テントでも寒い