山岳テント基礎講座 3,ダブルウォールとシングルウォール

このページでは、山岳テントの「ダブルウォール」と「シングルウォール」について解説しています。

山岳テントの壁の構造 ダブルウォールとシングルウォール

山岳テントは、壁の構造で二種類に分けられます。
1枚の壁で作られているテントと、2枚の壁で作られているテントです。

壁が1枚のものを「シングルウォールテント
壁が2枚のものを「ダブルウォールテント」といいます。

シングルウォールテント、イラスト

ダブルウォールテント、イラスト

壁が1枚か2枚かの違いによって特徴が大きく変わります。

ダブルウォールテント

ダブルウォールテントは、一般的な登山で最も多く使われている構造のテントです。

ダブルウォールテントのメリットとデメリットについて解説していきます。

まずは、ダブルウォールテントについての理解を深めましょう。

ダブルウォールテントのメリット

ダブルウォールテントは結露が少ない

ダブルウォール型テント(以下ダブル型)は、本体と外側で2種類の生地が使われています。

どうしてわざわざ2種類の生地を使うのでしょうか?。
これには理由があります。

それは「通気を確保するため」だからです。

もしも、テントの生地がビニールでできていたらどうなるでしょうか?。
ビニールには通気性がないのでやがて窒息してしまいます。
こんな危険なテントは使えません。

では、通気口をあければだいじょうぶでしょうか?。
窒息は防げますが、まだ問題があります。
それは「結露」です。

結露がひどいと、テントの中がビショビショになってしまいます。
ダウンのシュラフを使う場合は特に注意が必要です。
ダウンは、少しでも水に濡れると大きく保温効果を失ってしまいます。
気温が低い山岳地帯では命取りになりかねないのです。

そのために、テントには「結露を少なくする」という性能が求められます。

【結露とは】

窓が結露するイラスト

-ここで結露の仕組みをおさらいしておきましょう-

空気には水蒸気が含まれています。
空気は気温が高いほど水蒸気を多く含むことができます。
暖かい空気が冷やされると、含みきれなくなった水蒸気は水になります。
これが結露です。

空気に含まれた水蒸気の割合のことを「湿度」といいます。
湿度が高いほど結露がおこりやすくなります。

テントの結露防止の仕組み

人間は運動をしていないときでも多くの汗をかいています。
テントの中に人が居ると湿度が高くなります。
この湿った空気を少なくすれば結露を少なくすることができます。

テント内の空気は体温によって暖められます。
暖かい空気は、冷たい空気のほうへと流れる性質があります。

本体は通気性のある生地でできています。
テント内の暖められた空気は、外の冷たい空気のほうへと流れ出ていきます。

こうして、湿った空気を排出することにより結露を少なくすることができるのです。
しかし、通気性の生地だけでは雨を防ぐことができません。

そこで、もう1枚、本体を覆うように防水性のある生地を使います。 (注1)
この外側の防水生地は「フライシート」もしくは、「レインフライ」と呼ばれています。

テントが結露するイラスト

本体とフライシートのあいだには湿った空気を逃がす通路がもうけられています。
フライシートの下部は地面と離されています。
湿った空気はここから外へと排出されるのです。

ダブル型テントは、この構造のおかげで通気を保ちながら雨を防ぐことができるのです。
換気口だけではじゅうぶんな換気が行えないので結露が発生しやすくなります。
二層構造なら通気する面積を大きくとれるので有利なのです。

それから、ダブル型テントには、もう一つ結露を少なくする秘密があります。

結露は「空気が冷やされるほど発生する量が多くなる」という性質があります。

ダブル型テントは外側の壁で冷たい外気を遮断します。
そのため、本体の生地はフライシートほど低温になりません。
低温にならないぶん、結露が発生しにくくなります。

冷やされたフライシートは結露が発生しやすくなります。
しかしながらフライシートについた水滴はシートをつたわって下に落ちます。
本体の壁は濡れないので快適にすごせます。

フライシートの天井の水滴は本体に落下することもあります。
しかし、本体の生地には撥水処理がされています。
少しくらいの水滴は弾くようになっているので問題ありません。

ダブルウォールテントには前室がある

前室があるテント

フライシートと入り口のあいだには土間ができます。
この土間のことを「前室」と呼びます。
前室があると荷物を外に置けるので非常に便利です。

靴などの汚れ物を外に置いても雨に濡れないのでとても重宝します。
前室が広いモデルならザックを置くことができます。
そのぶん室内を広く使えます。

ただし、前室が広い製品ほど風に弱くなるというデメリットもあるので注意が必要です。

ダブルウォールテントのデメリット

ダブルウォールテントは悪天候に弱い

ダブル型はシングル型に比べると悪天候に弱いです。

○雨の振り込みや水浸みがおこる

風をともなう横殴りの雨が降るとフライシートの下から雨が吹き込みテント内に浸水することがあります
レインフライと地面との隙間が大きい製品は浸水しやすくなります。
フロアシートの立ち上がりが低い製品も浸水しやすくなります。

風による浸水もおきる場合があります。
風が強いと本体とフライシートがピタリとひっつくことがあります。
そうなると、フライシートに結露した水が本体に染みこんでしまいます。
古くなって、防水性能が落ちたフライシートでは雨水も染みこむことになります。

本体と壁との距離が近い製品ほどトラブルが多くなります。

ダブルウォールテントを使う場合は、テントマットやビニールシートを敷くなどしてシュラフを濡らさないように対策をします

○暴風には弱い

ダブル型は二層構造なのでシングル型よりも風に強いと考える人もいるようです。
でも、私は少し違う意見を持っています。

テントが壊れかねないほどの暴風に遭遇すると、テントが潰されないように内側から体で支えることがあります。
シングル型ならほとんどの場合、これでしのげます。

しかし、ダブル型はフライシートが風をはらんでしまいます。
本体は支えられてもフライシートは、なすがままです。

フライシートが「たるんだ状態から風をはらんで一気に広がる」反復運動を繰り返すことになります。
生地や張り綱にかかる負担が大きくなるので大きなトラブルにつながる場合があります。

しかし、こういった理由でダブル型が山岳地域で使えないというわけではありません。
日本メーカーの山岳用テントなら、ある程度の風になら対応できる性能をもっています。

ですから山岳地帯でも、大多数の人がダブル型のテントを使用しています。

そもそも、登山では、「悪天候は避ける」という当たり前の行動をとります。
テントが壊れかねない状況は、特殊な状況と考えねばなりません。

○快適すぎる

普通なら快適なのは良いことです。
でも、良いも悪くも「完成されすぎている」ので面白味に欠けるところがあります。

日本メーカーの大衆車と同じようなものです。

私は、初心者にはダブル型を使ってもらいたいと考えます。
でも、ある程度経験を積んだら他のテントで遊ぶのも一興かと思います。

注1:この記事では、3シーズン用(春、夏、秋)のダブルウォール型テントについて解説しました。
積雪期用テントのフライシートは防水生地ではありません
積雪期用テントは「外張り」と呼ばれる通気性のあるフライシートを使います。
「ダブルウォール型テント=防水生地」ではないので誤解のないようにしてください。
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シングルウォールテント

シングルウォールテントの特徴について解説していきます。

シングルウォールテントの特徴

シングルウォールテントは悪天候に強い

シングルウォール型テント(以下シングル型)は、「特異的な使われ方」をすることを想定して作られています。
それは生地が1枚という、構造が単純であることを最大限に生かした考え方です。

少しでも軽くしたい、少しでもコンパクトにしたい、少しでも設営の手間を省きたい。
シングル型はこういった場面で真価を発揮してきました。

雪山やアルパインクライミングなどのテント泊では困難が予測されます。
そういった登山では快適性は二の次になります。

シングル型にはダブル型のような前室はありません。
靴の置き場所や、雨の日の調理などを工夫する必要があります。
シングル型は、ダブル型よりも使いにくい一面があるのです。

しかし、シングル型は単純な構造なのでテントの中では設営が一番簡単です。
吹雪の中や、じゅうぶんな足場がないクライミングでは、余計な手間がかからないシングル型が好まれます。

そして、シングル型が使われる一番の理由は、暴風雨に強いからです。
ダブル型が暴風雨を完全に防げないのに対して、シングル型は暴風雨に強い構造になっています。

シングル型は、横からでも下からでも吹き付ける雨風を防ぐ性能があります。
ですので、最悪の状況を耐えることを考えるとシングル型が有利なのです。

でも、これは、あくまでも、特異的な登山であるが故の行為です。

シングル型テントを使えば暴風雨でも安心という考えは起こさないでください。
一般的な登山なら、こういった悪条件なら安全な場所に避難するべきなのです。

特異的な登山では、避難する行為そのものが難しくなることがあるのです。
簡単には、避難できないからこそ、悪条件にも耐えられるテントが必要なのです。

シングルウォールテントは一般登山者には不向き

シングル型は、一般登山者には適していないと私は考えます。

シングル型は、ダブル型に比べると快適性は低いです。

では、不便さを我慢すれば済むかというと、そういう問題でもないと思います。

一般山行では、シングル型の性能を最大限に発揮させるだけの活動ができません。

シングル型のメリットを受ける以上に、デメリットの影響を多く受けてしまうことになります。
つまりは「宝の持ち腐れ」になりかねないということです。

将来的に特異的な登山を考えているのなら別ですが、一般登山しか行わないのならダブル型を買うほうがいいと思います。

防水透湿素材シングルウォールテント

シングル型にはいろいろな生地が使われています。
1番多く使われるのが「防水透湿素材」を使ったシングル型です。

ゴアテックスなどの防水透湿素材を使っているモデルです。
シングル型を使う人の多くがこのタイプを使います。

以前はゴアテックスが使われていましたが、最近では「X-TREK™ファブリクス」と言う素材が使われています。
これは、ゴアテックスをテント専用に改良した素材です。

防水透湿素材シングルウォールテントのデメリット

X-TREK™ファブリクスですが多くの難点があります。

結露に弱い

水蒸気を逃がすことできる透湿素材ですが、ダブル型に比べると結露は多いです。
これは、水蒸気が通り抜けられる面積が少ないことと、生地が1枚であることでの外気温との差が関係しています。
結露を少なくする性能ではダブル型よりも劣ります。

シングル型だから軽量コンパクトとは言えない

「X-TREK™ファブリクス」は生地自体を比べると、ダブル型の生地よりも重くてかさばります。

ダブル型には軽くて薄い生地が使われるようになりました。
そのため、生地の使用量が少ないシングル型でも、軽量ダブル型との差が少なくなっています
「シングル型=ダブル型よりも軽くてコンパクト」という図式は、X-TREK™ファブリクスを使ったモデルでは当てはまらなくなっています。

耐雨性能に問題がある

防水透湿素材の難点は、古くなると防水性能が落ちることです。
あるメーカーでは、X-TREK™ファブリクスの防水性能を保証していません。
ですので、オプションでレインフライを販売しています。

参考メーカーHPへ

耐用年数が短い

ダブル型に比べると耐用年数が短くなります。

ダブル型は、レインフライの防水性能が悪化しても雨が生地をつたわって下へと流れるので劣化には強いです。
叩きつけるような雨なら本体へと降り注ぎますが、本体の生地も撥水性があるので多少の水滴なら弾いてくれます。

シングル型は「水浸み=即、室内への浸水」になるので、防水性能の少しの悪化でも大きく影響します。

古くなったゴアテックスのレインウエアが水漏れをした経験をもつ人は多いと思います。
それと同じことがテントにもおこります。

価格が高い

「X-TREK™ファブリクス」を使ったテントはかなり高価です。

上記の水浸み問題があるので耐用年数にも限りがあります。

テントは消耗品ですが、消耗品として考えるには結構なお値段です。

まあ、山小屋の宿泊料金と比較すれば格安かとは思いますが。

防水透湿素材シングルウォールテントの有効性

前室もないし結露しやすい。
しかも重量も収納性もダブル型と大差ない。
雨漏りするかも知れないし価格も高い。
こんなゴアシングルですが、ゴアのシングルならではの使い方もあります。

ゴアシングルが積極的に使われる場面として1番多いのが冬期山岳の単独テント泊です。
雨にも雪にも対応可能なので積雪期用ダブルウォールテントに比べると装備を軽量コンパクトにできます。

フライシートをかぶせる必要も無いので設営撤収の時間を切り詰められます。

ダブル型でフライシートをかけていると逃げ場を失った水分がフレーム周辺で凍ってしまうこともあります。
そうなると撤収作業も大幅に時間がかかってしまいます。

最悪の場合には凍傷になりかねません。
ですので、余計な手間がかからないシングル型が有利なのです。

それに、雪山ではダブル型でもシングル型でもテントに霜や氷がつきます。
霜や氷がついたままでは持ち運びが重くなります

霜や氷を完全に落とすのは無理ですし時間の無駄です。

霜や氷が残っていても、生地が少ないシングル型のほうが重くなる影響を少なくできます。

しかし、ゴアシングルが有効なのは降雪量の少ない山域だけです。
雪が積もってテントを覆うようなら酸欠の危険性があります。
換気口が閉じないようにするなどの注意が必要です。

ひと晩に数十センチも雪が積もるなら、素直に積雪期用テントを使う方がいいと思います。

撥水生地シングルウォールテント

誤解が多いのですが、「シングル型=オールウェザー」というわけではありません。
撥水生地で作られたシングル型テントがあります。

このモデルは、積雪期用テントとして作られています。

防水生地を使ってないので雨を防ぐことはできません
オプションのレインフライを使うことにより3シーズンに対応することが可能です。

先ほど紹介したゴアシングルですが、積雪期に使うと霜がつきやすいといった難点があります。

このモデルは撥水性の生地が使われています。
ゴアよりも透湿性に優れていて軽いです。
雨が降ることがないなら、ゴアシングルよりも積雪期用テントとして優れています。

また、内張りというオプションも用意されていることから積雪期用に特化された製品ということがわかります。

防水生地シングルウォールテント

これは、透湿性能がない生地です。

日本メーカーでは、これらのテントをシェルターとして分類しています。
通常のテントと比べるとかなり使いにくいので、通常の登山での使用ではメリットが少ないと思われます。

まとめ

■ダブルウォール型テントの特徴
○結露が少ない
○前室があるなど使い勝手がいい
○通常の登山ならダブル型を使う人が圧倒的に多い
○ダブル型はシングル型に比べると悪天候には弱い
■シングルウォール型テントの特徴
○快適性は低いが、悪天候には強い
○シングル型は初心者には不向き
○特別な状況で使われることが多い
○耐用年数が短い
○価格が高い
○防水ではないシングル型がある